小川芋銭遺品群デジタル集
85年間の眠りから覚めた芋銭遺品の数々をデジタルによる精細な画像で再現
牛久市の芋銭旧居「草汁庵」脇の倉庫には、未公開の芋銭資料約2700点が手付かずのまま眠っていました。この度、それらの遺品群の分析と永久保存を図るため、デジタル化を企画。約5年の歳月をかけてデジタル化が完了、刊行の運びとなりました。
これら遺品群は、ほぼ全てが未公開のものばかりで、知られざる芋銭の世界を知るための情報に溢れ、芋銭研究は大きな転換点(今までは先人の研究の焼き直し)を迎えたと言えるでしょう。
収録画像は精細を極めているため、拡大し細部に至るまでの検証が可能になります。
また芋銭ファンにとっては、居ながらにして、別世界の芋銭を堪能することができるでしょう。
牛久市の小川家には、故日本画家・小川芋銭の遺品群が手付かずのまま、芋銭没後85年間眠り続けていました。
行政による調査保存活動も一切なく、ただ劣化・散逸等による消滅の運命を待つばかりでした。それを憂いて、
かつて牛久市に存在した「芋銭を学ぶ会」の会員名(北畠 健、香取達彦、北郷康子)が立ち上がり、現状を保持したまま後世へ伝えるべく、経年劣化のないデジタル化を企てました。 現在のデジタル技術の進歩は目ざましく、相応の知識と技術さえ有れば、専門家に依頼せずともデジタル化は可能になります。こうして手探りの状態で試行錯誤を重ね、約5年の歳月を費やし刊行に漕ぎ着けました。
小川芋銭は、カッパの画家として知られ現在もなおその芸術は多くの人たちに愛されています。芋銭の人と芸術は多くの研究者によって、画集・研究書として紹介され、一方では、展覧会も断続的に開催され多くのファンを楽しませています。しかし、その内容は先人の研究の焼き直しというものばかりで、新味にかけるものばかりでした。 完成したデジタル集は、何といっても「初公開の資料満載」というところに大きな価値があります。 収録された遺品群は、芋銭研究者でさえ想像だにできないものばかりで、加えて、画質そのものが精細を極め、拡大表示には全く支障がなく、個々の資料について微細な精査が可能です。
したがって、これ無くして今後の芋銭研究は成り立たないと言っても過言ではありません。
遺品群デジタル集は、その性格によって第1〜第7集に分類、特に、第1集「芋銭宛書簡」、第2集「草稿下絵等」は、芋銭研究上最も重要な位置を占めます。 他方、芋銭ファンにとっても、芋銭の知られざる世界に接することができ、楽しみは尽きないと思います。
記
1 調査整理及び作業期間 2019年3月〜2024年3月 5年間
2 収録点数(遺品の性格上、以下の第1〜7集に分けて収録)
第1集 芋銭宛書簡 目録付 収録:1320通(全1320通読み下し文付) 収録図版:298点
*幸徳秋水(秋水全集未掲載)、田岡嶺雲(嶺雲全集未掲載)堺利彦、尾崎行雄らからの書簡もあり。
第2集 草稿下絵等 目録付 収録: 276点 収録図版:全点
*文字の手習、絵画の構想を練った跡、難解な芋銭の文字解読のヒント等々多数あり。
*芋銭の最も古い小学校の卒業証書を確認。
第3集 旧蔵書 目録付 収録:1010冊 収録図版:56点
*芋銭の脅威的な学殖の裏付けとなる書籍多数。カッパ絵の画題のヒントとなる版本等多数。
*禁断の書:幸徳秋水訳『麵麭の略取』幸徳秋水献呈書付。秋水の献呈書本は多分これ一冊。
第4集 旧蔵書画 目録付 収録: 28点 収録図版:全点
*夏目漱石らが絶賛した「名月上人」の書を芋銭も愛していました(現存)。
第5集 遺品等 目録付 収録: 19点 収録図版:全点
*芋銭が使用していた「墨」の銘柄が初めて明らかになった。
第6集 日記類 目録付 収録: 10点 収録図版:全点
*全く不明だった20代の芋銭の動向が、この日記類の出現で明らかになりました。
*芋銭が読売新聞の新年用募集絵画で第1等を獲得した時の父の喜び様が分かりました。
第7集 関連資料等 目録付 収録: 22点 収録図版:全点
*芋銭旧居、長男出征式、死せる芋銭、河童の碑の構想を練った写真等々を確認しました。
3 収録ディスク Blu-rey Disc 1枚 データ量:10.46GB
*A4版冊子「小川芋銭遺品群デジタル化について」付属
4 その他
*刊行年月日 2024年3月31日
*著者及び出版者 北畠 健、香取達彦
*当デジタル集に関するお問い合わせ
ホームページ「小川芋銭研究」の「お問い合わせ」からお願いします。
https://www.ogawa-usen.com
*詳細は、「小川芋銭遺品群デジタル化について」ページを参照してください。